フラフラとしながら目指しているのはどこだろう。あ、あの道路を曲がれば家になる。
マコトさんの後ろを見守るように尾いていく。マコトさんは道路を曲がるとキョロキョロしている。ああ、あの家を探しているのか。無駄に広かった敷地と家は狭めて売ったからなあ。
真。お前は覚えているんだな。
そうだよな、6年前だもんな。6年という月日を離れていても自分の家を忘れることはできないよな。
俺も忘れたことは無かったよ。
「真……」
真の後ろ姿しか見えないが、もしかして泣いているのだろうか。そう思い声を掛ける。
「マコトさん、どうしました?」
ああ、だめだ。お兄ちゃんと呼びそうになるが我慢だ。
ふと、思い立った。
「マコトさん、もしかして吐きそうですか?」
すると返事があった。
「うん」
「俺の所にどうぞ。トイレで吐いて貰っていいですよ」
「サンキュ」
急いで家に入れてトイレに行かせる。その間に家庭環境の分かる物は片付けておこう。ああ、そうだ。お母ちゃんの遺影も忘れずに片付けよう。
20分ほど経つとトイレから出てきたので安心した。
「ごめんなさい。飲ませすぎました」
「いや、こっちこそ申し訳ないです」
「水をどうぞ」
「ありがとうございます。頂きます」
水を飲み顔を洗うとスッキリしたみたいだ。
「こちらに布団を置いていますので、ゆっくり寝てください」
「あの」
「今は夏だから寒くないですが、この夏掛け布団使ってくださいね」
「修先生」
「おやすみなさい」
「ありがとうございます。おやすみなさい」
修と言う名は、ある人の名前を借りたものだ。父でも親戚でもない。だからバレるわけはない。そう思っていた。
だけど、翌日にはバレていた。おかしいなあ。