なんて言えば良いのだろうか。
「真さん……」
「真で良い。」
「タメだなんて急には……」
「真澄。俺はここから残り1年半、大学へ通う。」
「あの」
「で、ここから仕事をしに行く。」
「あの」
「ここは、お前の家だろうけど、俺の家でもある。」
「あの」
「モデルのバイトも続けたいし、それには寮を出ないといけないんだよな。」
「あのぉ……」
「口出しはさせない。」
溜息をついてしまう。
「真澄。」
「勝手に決めないでください。」
「俺は、お前が」
うるさいので遮ってやる。
「俺は仕事がある。邪魔されたくない。」
「真澄……」
「それに、俺は修だ。そう呼ばない人はいらない。」
「分かった。」
何が分かったのだろうか。いやに素直だな。そう思っていたら声が掛かる。
「修先生、ありがとうございました。ご馳走になりました。」
「マコトさん?」
「でも、生きてるし元気そうだということが分かって安心したよ。これ、俺の電話とメアドを渡しておきます。それじゃ、また。」
そう言って出て行った。
それじゃ、またって言った? ということは、また来る気か。
真。本当に、お前は勝手だよな。
高校だけでなく、大学にも行けて羨ましい。俺は、お前が帰ってくるとばかり思って待っていたのに。
ベランダに寄り窓を開け放つと、思いっきり叫んでいた。
「真のバカヤロー! 勝手なことばかりして、勝手に高校や大学に行って。勝手に自分のやりたいことやって……。俺は、俺は待ってばかりで……」
そう、俺は何も言わずに勝手に思い込んでいた。
「は……。俺も勝手な奴か。親戚の家に行って、高校卒業したら帰ってくるもんだと思い込んでいたからな。バカ真……」
ふいに耳の近くで声がかかる。
「バカはそっちだろ。本当に素直じゃないんだから。」
「え、な、なんで」
「お前は昔から追い込まれないと素直にならないからなあ。」
「バカヤロー!」
「はいはい。俺が悪かったよ。」