冷めてしまったコーヒーを一気に飲み込む。
「真澄。今日、俺たちの誕生日なの覚えてる?」
「21だろ。」
「そうだよ。」
「それが何?」
「6年、いや6年と5ヶ月も離れていたんだよな。」
「しんみりとする年齢じゃないだろ。」
「そうだけど」
いきなりハグされた。
「ちょ、ちょっと」
「そんなにも離れていたのは初めてで、その間お前が何をしていたのかを色々と知りたい。教えて。」
「別に俺は」
「お兄ちゃんに甘えることをして。」
「俺は、今まで1人で……」
「うん。だから、これからは俺に頼ってくれ。」
「急にそう言われても困る。」
本当に困るんだよ。そうしたら一言だった。
「それなら、このまま抱かせて。」
まあ、それぐらいなら別に良いかと思い素直にハグされていた。
すると耳元で囁かれる。うわ、こいつ意識して低い声を出しているみたいだ。先ほどとは違って何かがクル。
「真澄。俺にとって、お前は半身で大事な奴だ。たとえバカニートと言われても俺はそう思わない。」
「真……」
「俺に、そう言ってきた奴。あいつは村瀬と言うのか。の野郎、ぶん殴ってやる。」
「バカニートって、お前が付けたのでは」
「違う! そいつだ。」
村瀬さんは絶対に言わないのだけどと思い聞いてみる。
「背の高い厳ついた奴だろ。」
「チビだった。」
「チビ?」
「そう、チビで太っていた。」
「それ、村瀬さんじゃない。違う人だ。」
「そうなの?」
誰なんだろうと思いながらベランダに出ると、向かいの家の窓を木の棒で小突く。すると、即反応があった。
「なんだ?」
「おはようございます。村瀬さん、この人知っていますか?」
「この人って……」
真を前に出してやる。
「この人です。」
二重音声で聞こえてきた。
「え、誰、その人。」
二重音声の一つである真に紹介する。
「さっき話しただろ。警視庁の村瀬さん」
「え、嘘っ。まるっきり違う人だ。」
今度は村瀬さんにだ。
「村瀬さん。この人は」
「双子の兄の真です。」
横からしゃしゃり出てきた真を睨んでやる。
「おー、君が兄ぎみか。もしかして、そこで暮らすの?」
「そうです。これからは2人で暮らしますので。」
「それは良かったね。修先生も、今度は本人に愚痴ることができるな。」
「それって何のことですか?」
すると村瀬さんはとんでもないことを言ってくれた。
「もう、酒に強くてね。愚痴る度にウイスキーやビールを2本軽く開けてくれるんだ。飲み助をどうにかして欲しかったんだよ。」
「村瀬さーん!」
真は呟いている。
「俺は昨日、何杯飲んだっけ?」
「ビール飲む前にウーロン茶飲んだでしょ。」
「うん、ビール何杯飲んだか忘れた。」
「4杯。」
「で、お前は?」
「4本。」
そう答えると、笑い声が聞こえた。
「飲み過ぎ。」
「ザルかよ。」
こう言ってやった。
「普段は飲まないから良いんです」