村瀬さんの言葉に、俺の周りにいた数人の女から声があがる。
「え、嘘っ。あの若手小説家と言われている小林修先生?」
「私、警察シリーズ3冊とも持ってるよ」
「私はミステリーもの」
警察官からも同様の言葉が飛び交っている。
「俺の愛読書の、宦官ミステリーの先生?」
「サイン欲しー」
思わず言っていたら課長の拳が舞う。
「ミーハー厳禁っ」
「てぇ……。そう言う課長こそ嬉しい表情してるくせに」
「いつも、俺たちに”警察とは、こうあれ”って説いてくるくせに」
真がふざけた口調で言ってくる。
「修センセ、ネタにすんのか?」
「しないよ。しても短編だな」
「今回は許す。でも読者は俺だけだ」
「なら、帰ってから書く」
「楽しみにしとく」
「それより、お腹空いたよー」
「そうだ、それだ。遅くなったが食いに行こ」
ホテルの隣の敷地に立っている中華店に入る。
「まずは乾杯だな。俺はウーロンハイ」
「俺はビールで、餃子だな」
「野菜タップリ麺がある」
「それにしよう。あとチャーハンも」
注文お願いしますと言って店員さんを呼び注文する。飲み物が最初にくるので、お疲れと言って乾杯する。
「俺、午前中は大浴場に行ってたんだ」
「広かったか?」
「うん。露天とサウナにも入った。さすがにマッサージはパスしたけどな」
「いいネタになったとか?」
「んー……。そこまでにはならないかな。でもリフレッシュできたよ。お陰で午後は仕事に集中できたよ」
「良かったな」
食べ物がきたので、一旦会話は途切れる。
野菜タップリ麺は、野菜がシャリシャリとしていて量もあるので食べた感がある。肉と魚介類もあるので、まるで長崎ちゃんぽんみたいな感じだ。
「美味いよ、これ」
「チャーハンも美味い」
「餃子も美味い」
「大阪だと、餃子の王将って有名なんだって」
「へぇ。なあ、唐揚げも頼もうよ」
「お前、よく食うな」
「お兄ちゃんも食べるだろ」
「食べるよ」
「すみません、からあげ2人前お願いします」
お腹いっぱいになり幸せだ。でも若干食べ過ぎた気があるので少しホテルの周りを散策して戻ることにする。
「そういや、明日の朝に帰るんだっけ?」
「昼過ぎの新幹線でな」
「なら、朝はゆっくり出来るね」
「どういう意味?」
「朝風呂行く?」
「そっちか。そうだなあ、行こうかな」
「10時から入れるから」
「チェックアウトが11時半だから、30分入れたらOK!」
「分かったよ。それじゃ、10時にエレベーター前に集合だね」