頃は、4歳児。
いつも泣かされていた。
「やーい、やーい。この泣き虫、ちび虫」
「女に守られるなんて、男のプライドが許せんけどなー」
「そうそう、弱虫だよなー」
「アーン、アーン……」
「アンタ達! 誰が、泣かせてもいいって言った?」
「でたぁー、オニババ」
「オトコオンナだー」
「キャハハハッ!」
「あんたも、泣くんじゃないっ!」
双子の姉である香織にもひっぱたかれるだった。
「ふ、ぅ……」
ある日、勇気を振り絞って言ってみた。
「なんで、僕なの? なんでいじめるの? なんで?」
「ケッ!」
「どした、今日は泣かないのな」
「……つく。そこにいるだけでムカつくんだよっ」
『そこにいるだけで、ムカつく』
その一言が、僕に言わせていた。
おしばい、ではなく本当の気持ちだった。いつものハスキーボイスではなく、声が低くなっていた。
「いつもいつもいじめたり、いじわる言ったり……。そこにいるだけでムカつくだなんて。それは、俺のことが気になるからだろ。お前らは、俺のことがそんなに好きなんだ? 好きだからいじめるって言う、ソレか? ええ?」
そいつらは、僕の急変した態度を感じ取りタジタジになっていた。
「ちげーよ。もう帰ろ」
「なに言ってんだコイツ。同じく、帰ろ」
でも、1人は残っていた。
「俺は、あの2人とは違う。そうだよ、俺はあんたの事が気になってるんだよ。それが好きかどうかは、分からない。あんた、はっきりと言えるんだ。見違えたよ、俺も帰るわ。じゃーな、また明日。言いたい時は、そうやってきっぱりと言った方がいいぞ」
と、そいつは言って帰った。
3人とも居なくなって、僕はその場に座り込んでしまった。
そうしたら香織がやってきた。
「どしたの? 泣きもせずに、アイツ等を言い負かせたの? スゴイネー」
双子の天然な姉、香織は嬉しそうな表情で言ってくれた。
それから、僕呼びから俺呼びに変わった。言いたい時は、はっきりと言えるように頑張った。
泣くときもあったけど……。
それからは、あの連中は何も言ってこなくなった。
その代わり、「言いたい時は、そうやってきっぱりと言った方がいいぞ」と言ってきた子とは同じ方角に帰るので並んで帰ることがあった。
そして、あることがきっかけで仲良くなった。
それが、2人一緒に拉致られた時だった。
幼稚園から帰る途中、急に抱きかかえられた。
「うわっ」
「な、なんだっ」
「静かにしろ。おい、どっちだ」
「知らん。2人とも連れていけばいいだろう」
その子の方を見てると思いつくことがあるみたいだ。
「ねえ、もしかして」
「俺たち拉致られたみたいだな。警察呼ばないと」
名前呼びはバレる確率が高いからと言って、お前呼びにしようと決める。
でも、ここは一体どこなのだろう。
目隠しされて、どこかに連れていかれたから分からないや。