どこかに連れていかれ、そのまま置き去りにされてしまった。
ここはどこなのだろう。
思いが口に出ていた。
「ねえ」
「どこだろう。何のにおいもしねえ」
目隠しもされているので何も見えないし、どうすればいいのだろう。とりあえず頭を振ると目隠しは解けるかな。そう思い何度も頭を振る。
ゴツンと音がした。
痛みも同時にきた。
「ったーい」
「なにやってんだよ」
「頭振ったら、これ解けるかなと思って」
「お前って、頭が良いのか抜けてるのか……」
「えーん、痛いよぉ……」
「見せてみろと言いたいが、俺も見えないからなあ」
そう、おまけに手も縛られているので何かに捉まることもできない。
「大丈夫かあ?」
「ぶじゃない」
位置が分かったから動くなよと言うと、すり寄ってきたみたいだ。
お腹で何かをしているのか。
そう思っていたら声が聞こえた。
「解けた」
「え、どうやって?」
「お前の目の前に居るから、そのまま顔を下にして俺のお腹に当てろ」
「う、うん」
言われたとおりに顔を下にして、導かれるように顔を近づけると、そのままゆっくりと顔を上げる。
すると解けた。
「凄いね」
そう言うと、目の前に居るコースケは頬に何かを当ててくる。
「な、なに」
「可愛いなあと思って」
「いじめないでよ」
「いじめじゃないよ」
「それなら良いけど」
手は縛られているが、足は縛られていないので歩こうと思えば歩ける。
だから、立ちあがった。
その先に見えたのはハサミ。あのハサミは、お母ちゃんが使っているのと同じだ。
そう思うと、そっちへ向かう。
「どこ行くんだよ」
「ハサミが見えたんだ」
「ハサミ? 縛られているのに、どうやって使うんだよ」
その言葉を聞いて、それもそうかと思いとどまると「口があるか」と聞こえてきた。
噛み千切れるのならば、それにこしたことはない。
でも、これって縄だよね。
やっぱりハサミだよ。
ハサミのある方に近づいていくと、他にもあった。
「ねえ、ハサミとナイフ。どっちがいい?」
「ナイフ」
これは、大きなハサミだ。
使いかた知ってるよと思い、ハサミを握りコースケの縄にハサミを当てる。
何かを察したのか、こう言ってくる。
「いいけど、俺の手を切るなよ」
「任せて」
何かを思いついたのか、コースケはこう言ってくる。
「やっぱり、お前のを先にする」
「大丈夫だって」
「時間掛かると見つかるだろ」
「そういえば……」
コースケにハサミを渡すと僕の縄を切ってくれたので、今度は自由になった両手を使い、コースケの縄を切っていく。
「さて、帰るか」
「うん」