しかし、ここから歩いて帰るには遠い。
だけど仕方ない。
それに1人ではない、トモがいるからな。
そんでもってポケットには食べ物と飲物が入っている。
30分ぐらい歩いただろうかトモが音を上げた。
「ねえ、疲れたよ。休憩しようよ」
「体力ねえ奴め。まあ、お腹すいたから食べるか」
何時なのか分からないが、おやつタイムかな。
温くなったオレンジジュースとパンでおやつにする。
トモはバナナジュースも飲んでいる。
トモの声が聞こえてくる。
「ふわぁ、なんだか眠くなってきた」
「寝るなよ。帰れなくなるぞ」
「それは嫌だ」
マジに寝そうだったから言ってやると、すぐ目を大きく開けてくるが、また瞑ってしまった。
ってか、ここはどこだ。
方角としては合ってると思うのだけどな。
駅を目指して歩いていたのだけど、お金がないからなあ。
電話したくてもできないし。
ハンカチがあったので、トイレに行って濡らして戻ってきた。
「トーモー、起きるのだよ」
顔を拭いてやると、トモは気持ちよさそうに目を開けてくる。
俺も顔を拭くとスッキリしてきた。
「あ、おまわりさん」
「そうか。頭いい」
今度は、おまわりさんを探しに歩く。
駅に向かって歩いていると、おまわりさんを見つけた。
トモが走りだす。
「あの、おうちに帰りたいのですが」
「あ?」
いや、それだけだと無理なので俺もおまわりさんに声を掛ける。
「田園調布って、どっちですか?」
「はぁ?」
「2人して迷子になっちゃって」
「どうやって来たの?」
「車に乗って」
「その車に乗れば」
「途中で降りたから分からなくなって」
そのおまわりさんは優しく教えてくれた。
ここは南麻布で、田園調布にはと行き方を教えてくれたが、分からない。
電話番号が書かれた紙を渡して電話したいと言うと、電話を貸してくれた。
電話をすると、相手は怒り奮闘だ。
『で、どこにいるって?』
「南麻布駅の、おまわりさんとこです」
『まさかとは思うが、あのクソ爺の』
「ところに連れて行かれたけれど、自力でここまで戻ってきた」
しばらくするとため息とともに、この言葉が返ってきた。
『分かった。待ってろ』
トモに、俺の父親が迎えに来るからと言ったら安心顔になった。