おまわりさんのとこで待ってると、父ちゃんは迎えに来てくれた。
「あ、お母ちゃん」
「トモ。ああ、良かった」
父ちゃんの顔を見たおまわりさんは姿勢を正して敬礼をする。
なるほど、顔を見たら分かるのか。
「こ、これは……」
「うちの子がお世話になりました」
トモも声を掛けてくる。
「おじちゃん、ありがとうございます」
「トモ君、あとでな」
「なにが?」
これは……、父ちゃんの拳がくるのか。
トモは後ということは、俺は力任せの拳骨を食らうのか。
だから言っていた。
「父ちゃん、これは不可抗力で」
「ここに来たいきさつは分かるが、あそこで何をやったのか忘れたとは言わせんぞ」
「あ、あれは」
「だから、トモ君もだ」
トモも文句ありそうだ。
「おじちゃん、あれは向こうが」
「言っておくが、あの獅子は俺が創ったものだ」
そっちかよ。ってか、あれを父ちゃんが創ったのか。
トモの謝る声が聞こえてくる。
「ご、ごめんなさい」
俺も言っていた。
「父ちゃん、もしかして行ったの?」
「電話があった」
「誰から?」
「クソ爺から。見事な物だったぞと笑いながら言ってきたが、跡を継がせる気は、これっぽっちもないと返しておいた」
「うん。そう言ってくれると嬉しい」
乗れ、帰るぞ。
そう言われ車に乗ると、その車はクソ爺の家の前を通って帰ろうとしている。てことは、反対方向に歩いていたということか。俺の土地勘狂ったのかあ。
トモの声がする。
「あ、そうだ。お母ちゃん、カオリは?」
「家で待ってるよ」
「怒ってる?」
「うーん……、そうだね」
カオリって、あのオトコオンナかと思い当たると言っていた。
「トモも、あいつには勝てないってわけか」
「だって殴ってくるんだよ」
「あいつのパンチは痛いだろうなあ」
「すっごく痛い」
うんうん、分かる。
車はトモの家の前で止まった。
「ありがとうございます。お陰で」
おばさんの言葉を遮る父ちゃんは殴る気満々の表情だ。
「それじゃ、トモ君」
「はい?」
「康介、お前もだ」
うへぇ、2人一緒かよ。
観念して仕方なく車から降りてトモの隣に行く。