龍神の宮殿

10

微睡みの中、ふいにお母さんの声が聞こえてきた。

”あ、あああっ! 私の身体が、私の身体が腐っている。こんな目に遭うだなんて。食らいなさいと言った筈よ。”

今度は、お父さんだ。

”まだ50年しか経ってないから腐ってても少しだけだ。お母さんの身体を食らえ。骨も残さずにな。でないと土になってしまう。今迄何をしていたんだ。”

煩いよ。2人揃って、今頃何なんだよ。その思いが口に出ていた;

”食らい方なんて知らない。”

”生き物を食らっていたのではないのか?”

”口にしていた。”

”どういう意味だ?”

”そのまま飲み込んでた。”

”そうか、それで色々と納得した。飲み込むのではなく噛むんだ。”

”噛むって何?”

”噛み砕くんだ。お前の身体は何処にある?”

”もっと下にある。”

”それなら、お母さんの身体を下に落とせばいい。”

”そうか、そういう考えがあったか。”

すると、お父さんはこう言ってきた。

”もう、お父さんもお母さんも手助けは出来ない。自分1人で考え行動を起こすしかないんだ。”

”どうすればいいの?”

その言葉に、お父さんは溜息を吐くと、こう返してきた。

”ずっと離れていたから何も教えてなかったか。あの時、3人で殺された方が良かったのか。今となっては口惜しい……”

”お父さん?”

”ちょっと待ってろ。”

そう言うと、何処かに行ったみたいだ。

暫らくすると、声が聞こえてきた。

”そうか。お前は神龍になってから何もしてないのか。”

”どういう意味?”

”結界に歪みが生じている。お前の尾は人間界に在り、二度と動く事は出来ない。”

”もしかして、あの5人……”

”何があったのか?”

小さき5人の人間の事を話すとため息をつきながら笑ってくる。

”お前の身体は腐朽が進んでいる。肉体に戻る事は出来るが、何も出来ない。それならば、その姿のまま生きろ。”

”それって、戻ったらどうなるの?”

”戻っても何も出来ない。火を噴く事が出来るのは400歳以上生きてないと出来ないんだ。誰かと戦うのは500歳以上になって戦士にならないと戦えない。”

お母さんの声が聞こえてくる。

”神龍にさせたのが早過ぎたのね。”

”そうだ。せめて400歳以上にならないと無理だ。”

 

お母さんの身体からへんな臭いがするので放っておいたので腐ってしまったみたいだ。そのせいか、結界内だと言うのに木々が茂り、空飛ぶ生き物が舞い降りてくる。

吾は自分の体内に戻ったりと、その宮殿と肉体のある地下を行き来していた。その代り、死んで魂となった両親と交信していた。

いろんな話を聞いていた。

死んで50年経つと、魂は自由に飛べるという事も教えて貰った。

”まあ、産まれて直ぐに神の御子を食らって、ここに閉じ込められたんだ。”

”それもそうね、何も知らないのは当然ね。”

”教える時が無かったのだからな。”

”実践は無理だけど、こうやって話が出来るのは嬉しいわ。”

戦士となるには500歳以上生きていないとなれないことを知ったが、あと何年あるんだろう。

そして、50年後に目覚める。

そう思っていた。

だが、50年もしない内に叩き起こされた。

 

最初に、結界内に人間が居る事に気が付いた。

吾の食べ物を勝手に食べている。

誰かが木の枝をボキボキボキッと折ってくれる。

もっと折ってくれ。

それがあると邪魔なんだ。

だけど、その人間は勝手に落ちていった。

 

しかも、誰かが勝手に小屋に入り、そこに作り置きされている杯に水を入れたみたいだ。

味気ない水だが、これは違う。

お蔭で、お母さんの身体の腐臭が進んでしまった。

腹が立ったので、その2人を落としてやる。

 

だが、残り5人の人間は人間界と吾の世界を隔てている結界を登ってこようとしてくる。

もう二度と人間を宮殿に入れたくない。

だから落としていたのに、この5人は落としても落としても登ってくる。

何故だ。

だから腹が立って1人ずつ消してやろうと思ったんだ。

”遊んで。”

”もっと遊んで。”

”楽しませて。”

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