龍神の宮殿

11

頃はゴールデンウィーク、10人の男が山登りに行った。

1週間で戻ってくる予定だったが、ぎりぎり9日間で仕事に間に合った。

その9日間の話をしてあげる。

 

行きは朝一の始発で東京を出発して目的地に着いたのは、その日の夕方17時過ぎ。

尻が痛くて痛くて根っこが生えた気分だ。

受付を済ませ、テントを借り、一張りに4人が寝転ぶ。そのテントは最大の8人用を三張り借り、残り二張りには3人ずつ入る。

その日の夕食は受付の隣にあるレストランで食べた。

翌日は皆で山を登り8合目まで登ると広場があるのを見つけて各々が好きな事をしていた。木登りしたり、アスレチックだったり、何もせずゴロンと横になったり色々だ。

テントを張ってる人が居たので、テントをここまで持って来て張り直す。

その広場には似つかわしくない喫茶店があり入ると、とても感じの良い喫茶店だったので、そこで昼食を食べると、再び頂上目指して登り始めた。その途端、Mr.Kが足を滑らせ芋蔓式であれよあれよという間に10人ともに落ちてしまった。

 

気が付くと、そこは薄暗く霧靄が深い。

俺も、皆と同様にiPhoneを起動し位置と時間を確認するが、電波は圏外で役に立たない。

坊ちゃんは上を見上げてるが「何も見えない……」と呟いてる。

真っ暗だと心許無いよな。

それが伝わったのかMr.AとMr.Sは火を熾(おこ)していく。Mr.Tはサルの様にするすると木を登り、枝や葉を落としてくれる。

火は木と木をすり合わせて熾しているのだが、この2人がやると簡単に熾る。4ヵ所に火が付き、皆は近くにある火の周りに座る。

火を見ていると、温もりと安心感が湧いてきた。その時は各自のリュックから食べ物を出し、食べていた。

その内に、坊ちゃんが「水音が聞こえる」と言うので、皆で動いた。

今思えば、動かなければ良かった。

水音のする所に行くと、水深は浅いが魚が泳いでる。飛び込みたいと思っていた。皆が皆、飛び込めるほどの水量では無かった。

その代り、魚を手掴みで捕り、枝に刺して串焼きにして齧り付く。泳いでた魚は大きかったので1匹でも食べ応えがある。

しかし味は付いてない。無味だが、おこげが美味だ。これだけだと足りないが皆が同じだから文句は言えない。

そんな時、坊ちゃんの声が聞こえてきた。

「あっちに家がありましたよ。誰かが住んでるかもしれない」

その言葉に食いついたのはMr.Bだ。

「誰かと一緒に行ってこい。」

その言葉に立候補したのは2人の男。

3人で行って、戻ってきたのは1人だった。

「あの2人はどうした?」

「家ではなく半壊の小屋でした。でも屋根もあるし、今夜はあっちで寝ましょう。2人は寝床を作ってます。」

「寝るって……」

「雑魚寝ですが、良いですよね?」

「それは構わんが。」

「今、夜ですよ。」

「はあ? 体感では朝なんだけど……」

もう1人の男が口を挟んできた。

「屋外と屋内では寒さは段違いです。10人でも寝れるの?」

「はい、小屋は広いです。壊れてると言っても小屋の中ですから」

「それなら行った方が良いな」

その言葉に、皆でぞろぞろと小屋に向かった。

「へえ、小屋と言うから狭いかなと思ってのだけど」

「10人寝れるって言っただろ」

小屋に入ると2人の男は足を伸ばして寝っ転がっている。

「何処が壊れてるって?」

「壁を触らないで下さい。触ると屋根が崩れます」

「なるほど、そういう意味の半壊か」

男10人がゆったりと手足を伸ばして寝れるスペースがあるのは嬉しい。少し肌寒いが、皆がくっ付いているから寝れそうだ。

 

何か背中に温もりを感じる。

背の方に目を向けると誰かの背中がくっ付いてるみたいだ。しかも、腹には坊ちゃんがくっ付いている。勝手に俺の腕に頭を乗せて。

この2人の体温で身体が温まるのを感じる。

こんな無防備な寝顔を見ることが出来るだなんて思わなかった。

今迄に無く、役得な旅行になりそうな感じだ。

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