身体が動かないので、思わず言っていた。
”体が動かない。”
「当たり前だ。」
”喋れるのに。”
「計算して撃ってるんだ。」
”そんなチャチな物に。”
「気が付かないか。これは洗礼を受けた護身銃だ。」
”なんで、あんな弾を。”
「見つけたからさ。鉛玉だと無理なのは分かってるから入れ替えた。それだけだ。」
”貴様、何者だ。”
「医者だ。」
”にしては”
「詳しく言うと、デジタルドクターであり、スポーツドクターであり、ヒューマンドクターだ。」
”他には?”
「まだ分からないのか? 洗礼を受けた護身銃を通ったから弾も洗礼されたんだ。それを、貴様に向けて撃ったんだ。神の加護付きでパワーアップした弾丸でな。」
頭の中では2人の親の言葉が伝わってくる。
”洗礼を受けた護身銃に、神の加護付きだと。”
”それだと叶わない。”
その両親の声に毒づいていた。
”くそぉ、それでかっ”
「人間に危害を与えようとした。してはいけない事だろ。」
”自由に空を飛び回り、駆け巡りたい。”
「死ぬと自由に出来るぞ。」
”魂ではなく、この身体でだ。”
「それは無理な話だな。」
違う人間の声がする。
「よし、後は蓋を閉めるだけだ。」
”貴様等、絶対に許さない。”
「50年ごとに起こる地震とかは、もうゴメンだな。」
「地盤が緩んで人も住み付かなくなってきている。ここで暮らす人間にとって死活問題だ。」
”吾をどうするつもりだ?”
「封印する。」
「もう出てくるな。」
”勝手な事を。”
「どっちがだ。」
「大人しく成仏するんだな。」
そう言うと、現世と異世界の狭間に当たる場所を確実に見抜いた人間は、そこへ箱を置いた。