いきなり目の前に焔が出現した。
しかも、もう少しで目指す箇所に着くという時に。
これだと避けれない。
躱す事も出来ない。
突っ込む。
しかも、上からは雷が降りてくる。
上と下から狙ってくる。
誰もが逃げる事も避ける事も出来なかった。
”ギャー……”
”この雷は……”
”あ、あ、あ……”
”こ、これ、は……”
”いか、雷は……”
”こ、この、ほの、お……”
”あ……”
”死んだ、は、ず……”
”みん、な、で……”
”くらっ……、た……”
”ど……、し、て”
しかも溶けていく。
先に翼が、それから足、尾、胴体へと燃え移っていく。
最後に頭だ。
”あ……!“
“きえ、て……”
”こ、これだと……”
”狭間には……“
“行けれな……”
”あ……”
”転生の、輪に……“
“入れな……”
”い、やだ……”
”嫌だ―――”
そんな光景を、目を背ける事をせずに2龍は眺めている。
”流石、私の自慢の旦那様ね。”
”はは。まあ、あいつは全ての物を飲み込んでただけだからな。”
”あら、何かネタがあるの?”
小声で耳打ちしてやる。
”あいつの肉体の中では、あの御子だけが生きていた。”
”えっ、あの神の御子が?”
”その御子に持ち掛けたんだ。『吾は、すでに死んでいる。そこから出してやるから、吾を食らった龍に報復したいので力を借りたい』とな。”
”それで……”
”そうだ。神の御子の力で、さっきの焔が出たんだ。”
”どおりで焔の威力が違うと思った。”
”雷は得意だしな。”
そう言うと、妻はクスクスッと笑っている。
”50年後、あの子が戻ってくるのが楽しみね。”
”ああ。今度は、しっかりと守ってやる。”