1人だ。
これで1人きりになってしまった。
もう誰も来ない。
僕の頭の中には次から次へと母の見聞きしたものが色々と出てくる。
暫らくすると、幼い龍が出てきて、そんなにも間を置かずに何処かに閉じ込められた。その幼い龍に会いに、母は父と一緒に会いに行っている。
それは何処で、誰に会いに行ってるの。
ねえ、お父さん、お母さん。
そこは何処なの?
だが、3回目の逢瀬の時に、その幼い龍は自分だと分かった。
”強い者を食らうと、そいつの力は強くなる。”
お母さんは、たしかにそう言った。
これはお母さんの力なのか。
たしかに僕は戦などしてないので経験なんて無いので、弱いのは当然だ。
お母さんとお父さんは2人とも戦士で強いのか。その2人が裏切って僕と会ってたのだから追われるのは分かる。分かるが、殺さなくても良いだろう。
返してくれ。
僕のお父さんを、お母さんを返せ。
こんなんだと僕もすぐに殺される。
とにかく隠れなきゃ。
でも、何処に隠れば良いのだろう。
頭の中を駆け巡っていたお母さんは、”さようなら”の言葉で止まった。
何かスイッチが入ったのだろうか。
ブブブ……と聞こえたと思ったら、今度はヒュンヒュンヒュンッと音がして、ガシャーンッと何かが壊れた音がした。そのままジッとしていたが、それっきり音はしなくなった。
外はどうなっているのだろう。そう思い、宮殿に上がり窓から見上げると、沢山の龍がこちらを見ていた。
僕に気がついたのか、一斉に火を噴いてくる。思わず身を潜めていた。
だけど、熱くない。
火とは熱くなる物だろう。お父さんから、そう教えて貰ったのだけど違うのか。どうして熱くならないのだろう。
恐る恐る宮殿の窓から見上げると、今度は、こっちに向かって飛んでくる。
”う、うわー!”
だが、途中で方向を変えているのはどうしてなんだろう。
頭の中に、その龍達の言葉が聞こえてくる。
”くそっ、忌々しいっ”
”こんな事になるのなら、頑丈に作らなければ良かった。”
”400歳にもならない子どもには出来ないものだ。”
”そうだな。結界張りが得意なのは女の方だからな。”
”絶対に、ここに居る。”
”もしかして張ったばかりか。”
”くそぉ……”
”どうする?”
”頭を食らった奴は居るか?”
”少ししか残って無かったが、あいつの断片によると50年後だ。”
”あいつに半分以上やられたし、人数を増やさないとな。”
”成龍はいるが戦士は少ないからな。”
”それもそうだな。それなら50年後だ。”
そう言い残して、何処かに消えていった。
結界って、お母さんの力なのだろうか。