3回目ともなる今日は、3時間やって8本当たった。それが嬉しくて、2人を引き留めていた。
「利根川専務、どうされました?」
「いや、嬉しくて、嬉しくて。少しでも嬉しさを共有したくて引き留めたのだが、良かったかな?」
「もちろん良いですよ。それに、そんなに利根川専務が言ってくれると嬉しいです。安藤専務は当たりませんでしたが姿勢良くなりましたしね。」
安藤君は苦笑している。
「私は、別に趣味感覚だから良いんだよ。」
「苦しさ紛れの言葉ですね。安藤専務から言われたときは驚きましたけどね。」
その言葉に聞いていた。
「安藤専務と私、どっちが先だった?」
「安藤専務です。」
「ああ、だから安藤専務もと言っていたのか……」
「はい。結果オーライなので。私は本当に嬉しいです♪」
裏表のない瀬戸常務は本当に嬉しそうだ。
だから、言っていた。
「教えてくれた瀬戸君に、せめてもの気持ちを伝えたいのだが」
「いえいえ、そんな大それた事しなくていいですよ。その気持ちだけで十分です。」
「いや、実は。そのつもりで食事を作ろうと思ってね。」
その言葉に驚いたのは瀬戸常務だけでなく安藤専務もだった。
「利根川専務が?」
「食事をって……」
2人揃って驚いている。
「そのつもりで引き留めているんだ。食べてくれると嬉しいのだが……」
見るからに安藤専務は考え込んでいるし、瀬戸君に至っては慌てている。だから本音を口にしていた。
「今までが今までだけど、今回は素直な気持ちなんだ。だから食べてくれると嬉しい。」
安藤専務と瀬戸君の言葉が重なる。
「見返りとか、貸しとかは無しですか?」
「もちろん、無いよ。」
安藤専務は納得顔をしている。
「なるほど即答ね。」
瀬戸君は思案顔だ。
「好き嫌いあるのだけど……」
その言葉で失敗したと思っていると、安藤が口を挟んでくる。
「利根川専務の気持ちは頂くとして、違う日にしませんか?」
「安藤専務?」
「この瀬戸君は、昔から好き嫌いがたくさんあってね。私たちは従兄弟なんだけど、本当にこいつは、嫌いな物は徹底して食べないんだよ。」
「ちょっと、安藤専務。」
「外食にするか、違う日にするかで。今日は、瀬戸君の好き嫌いを聞いておくとかね。」
ダメ元で聞いていた。
「和食にするつもりだったのだが……」
「和食だって。瀬戸君どうする?」
そう聞かれると、メニューによって違う。そう思い、瀬戸は利根川専務に聞いていた。
「和食って天ぷらですか?」
「揚げ物は嫌い?」
「こってりは嫌いなんです。」
「カレーやシチューは?」
「好きです。」
「ちなみに、中華は?」
「中華って、油こってりが多いですからね。餃子やアッサリ味のチャーハンぐらいなら……」
「パスタ関係は?」
「好きです。」
メニューは決まった。
「チャーハンにして、あとジャガイモとキュウリでポテトサラダ。でも和食も入れたいのだけど、茶碗蒸しと味噌汁。茶碗蒸しは大丈夫?」
「茶碗蒸しとポテトサラダ、大好きです。」
「それは良かった。すぐ作るから待ってて。」
「はい、ありがとうございます。」