安藤専務はご機嫌だ。
「うん、美味い!」
瀬戸常務もご機嫌だ。
「美味しい!」
そんな2人を見て、利根川専務は本当に嬉しそうだ。
「ご馳走様でした。」
「美味しい物が食べられて幸せ-」
「お前は、その好き嫌いをなくそうな。」
「えー、なんで?」
心底からの言葉なのかはすぐに分かる。だから憎めない相手が、また2人増えた利根川は笑顔で手を振り見送っていた。
車に乗り込んだ2人は言っていた。
「しかし、本当に美味かったなぁ。」
「誰かさんよりも美味しかった。」
「毎回のように人を巻き添えにしてくれやがって。」
「だって、本当に怖かったんだよ。」
「もう一度、言ってみろ。」
「隅っこで壁ドンされながら脅しに来たのか、と怯えていたのに。中身は弓道を教えてというものだったからなあ。それに、ビクビクしながら教えるよりはと思って呼んだの。それぐらい分かってよね。」
「まあな、今までが今までだったからなぁ。」
「そうだよ、本当にビビったんだよ。でも、どうして隅っこに行かされたのだろう?」
すると、安藤専務はキッパリと言ってきた。
「そりゃ、岡崎君がいるからじゃないか。」
「岡崎君? なんで、岡崎君が」
「思い出せよ。岡崎君は利根川の秘書をしていたんだぞ。」
「あ、そうか! そういえば、あの利根川専務に唯一タメで言い合える人物だ。」
「そう言う奴が、自分の秘書になって良かったなあ。」
「まあ、言い負かされているのだけどね……」
「そりゃ、岡崎君はベテラン秘書だからな。それに、誰かに教えを請うという場面だから、岡崎君に聞かれたくなかったのだろ。そう思うな。」
「利根川専務はプライドの塊だから、なおさらだね。」
「そうそう。」
わははと笑いながら、それぞれのマンションに帰っていった2人だった。
ヒロこと安藤専務は神剣と盾を1セット、スタンダードなナックル1セットを土産に貰って帰ったのだが、もっぱらナックルで遊んでいた。
「やっぱりナックルが一番だよなあ。思いっきりインコースに殴り入れるとスカッとするだろうな。」
ヨシこと瀬戸常務は弓矢2セットと矢は残った48筒全部の他に、フェンシング剣と盾を持ち帰ったのだが、利根川専務のコース作りにヒントを得て、自分の部屋の細長い廊下を道場に見立てて的を飾り、そこに矢を射る。
「うん、やっぱり弓道って良いなあ」
タカこと高橋常務はフェンシング剣と盾、弓矢1セットに矢は1筒だが持ち帰るとフェンシング剣を構え、盾に切りつけている。
坊ちゃんこと社長子息は皆から貰ったナックル、神剣と盾、弓矢1セットと1筒の矢を見ていると、行って帰ってきたんだよなあと感慨深くなっている。
そして、お助け隊が漁っていた物は、次の物語で。
(終わり)